太陽光発電は地球に優しいクリーンエネルギーのひとつで、環境保護に役立つ次世代のエネルギー源として注目されています。しかし、太陽光発電にはいくつか課題があるため、導入前に押さえておくことが大切です。
地球環境の保護は、世界規模で取り組まなければならない課題で再生可能エネルギーは次世代のエネルギー源として注目されており、そのひとつが太陽光発電です。
再生可能エネルギーの中では風力に次いで発電量が多く、設置しやすいことから新興国・途上国でも導入が進んでいます。既存のモジュールより安価な中国産モジュールも増えていることから、より導入しやすくなってさらなる拡大が見込めるでしょう。太陽光発電は多くの国で利用できる再生可能エネルギーとして、将来性が高い発電方法です。
2021年時点ではFIT制度が運用されていますが、今後はFIP制度への移行を予定しています。FIP制度では適切な利潤を含んで売電価格を設定するため設置しやすくなり、さらなる普及ためのエネルギー政策にも要注目です。
世界中で地球環境を守るための取り組みが、実施され、日本では以下3つの目標を実現するため、政府が再生可能エネルギーによる発電設備の導入を推奨しています。
導入状況
太陽光発電協会によると、日本国内における2014年~2019年の住宅用太陽光発電導入件数は、13万件~20万件で推移しています。2014年以降はそれ以前に比べて新規導入が少なくなっている状況です。日本で太陽光発電の導入が広まった理由は、2012年に固定価格買取制度(FIT)がスタートしたことによるものです。今後の導入見込量は、最大で2030年に住宅用と非住宅用等を合計して9,700万kW、2050年には2億4,780万kWと予想されています。発電電力量の見込みは、2030年時点で1,058億kWh、2050年時点で2,605億kWhです。
地球環境保護の観点から再生可能エネルギーへの注目が高まっており、今後も太陽光発電の導入が進むと予想されています。
太陽光発電の導入は世界的に見ても好調です。2019年時点での累積導入量が多い国は、中国(204.7GW)・アメリカ(75.9GW)・日本(63GW)・ドイツ(49.2GW)・インド(42.8GW)で、先進国から新興国まで幅広く導入が進んでいます。
画像引用:資源エネルギー庁
太陽光発電の導入費用推移
経済産業省 資源エネルギー庁の調査によると、太陽光発電導入時にかかる費用は年々低下傾向で推移しています。
2013年には設置費用を含めて1kWあたり40万円以上の費用が発生していましたが、2022年には1kWあたり30万円以下にまで下がりました。
価格が低下している背景には、太陽光発電の普及に伴い設備や太陽光パネルを量産できるようになったり、技術開発が進み低価格でも高品質の太陽光パネルが販売できるようになったことが関係しています。
これまでの推移から、2025年度の地上設置産業用太陽光発電の設置費用の想定値は、50kW以上の場合11.3万円/kW、10~50kWの場合17.8万円/kWとされています。
画像引用:資源エネルギー庁
太陽光発電の売電単価推移
2012年のFIT制度開始以降、固定買取価格は年々下落しています。
10kW未満設備(家庭用太陽光発電)は設置規模が小さくなることから10kW以上50kWの区分と比較して買取価格が高くなります。
しかし2012年には発電区分が10kW未満で42円/kWhの買取価格であったものが2023年には16円/kWhになっております。11年で差額は26円/kWhにもなります。
10kW以上50kW未満(事業用太陽光発電)の場合、2012年では40円/kWhだったものが10円/kWhになっております。差額は30円/kWhとなっています。
2023年の特徴として例年に比べて下落幅が小さいことが挙げられます。
10kW未満の区分では毎年2円/kWh以上の下落幅でしたが、2023年は1円/kWhの下落幅に落ち着きました。
下落幅が小さかった理由にはFIT制度普及の停滞、太陽光発電の導入目標が64GWから約120円GWに引き上げられたこと、買取価格の据え置きを求める意見が強くなったことなどが考えられます。
画像引用:資源エネルギー庁
需給バランスと出力抑制
太陽光発電の設置が急激に増えたことで、最初に顕在化した問題が「電力の需給バランスの乱れ」です。電気を消費する需要量に対して過不足がないように、発電・供給量を調整してバランスを取らなければ、不具合を起こしてしまいます。
例えば、電力の需要に対して、供給が足りないとき停電を起こすことは想像できます。一方、電力の需要に対して、供給が多すぎても停電の原因となってしまうのです。
これは、電力の需給バランスが崩れることで「電気の周波数」と呼ばれる要素に乱れが生じ、周波数の乱れが大きいときは安全装置の機能によって発電所が停止するためです。
発電所が停止すれば、周波数はより大きく乱れて連鎖的に発電所の停止を招きます。出力抑制には、このような周波数の乱れを防止する役割があります。
2030年問題
2030年問題とは、寿命で発電できなくなった太陽光発電設備の大量廃棄が必要になったときに、最終処分場で処理しきれない可能性が懸念されていることです。ソーラーパネルの太陽電池には、鉛や銀など環境にも人体にも被害が発生する有害物質が含まれています。
FIT制度・FIP制度の開始など、政府による再生可能エネルギーの促進が増加し、住宅用の太陽光発電設備が登場した当初は、現在より高額な設置費用が必要でしたが2000年代には生産効率と性能が向上し、2009年の補助金制度再開もあって導入量が急増した歴史があります。
このため有害物質を取り除かないまま埋め立て処分されてしまうと、環境破壊に繋がりかねません。
2022年7月から、発電事業者に対して太陽光発電の廃棄・撤去費用の積立が義務化されました。将来的な発電設備の不法投棄を防ぐため、10kW以上でFIT・FIP認定を受けた全ての太陽光発電事業を対象とする制度です。
2030年代に向けて、国内外で太陽光パネルのリサイクルに取り組む企業や自治体が少しずつ増えています。
ペロブスカイト太陽電池
ペロブスカイト太陽電池は、ペロブスカイト構造を持つ材料で製造された太陽電池です。従来型のシリコン系太陽電池や化合物系太陽電池に迫る変換効率を持ちます。
ペロブスカイト太陽電池は、軽量で柔軟性がある点が特徴です。シリコン系太陽電池が設置困難なビルの壁面や耐荷重が低い屋根にも設置できます。
スピンコート技術(高速回転で生じた遠心力で薄膜を作る)で比較的容易に製造できるため、太陽光発電の利用可能性を広げる電池として注目を集めています。